まず申し上ぐべし。安住殿は、休まれたわけではない。ただ、わがタイマーの設定が迷走し、殿の御声が、しばし我が家より遠のいてゐたのみ。*1 されど、いまや再びその声、朝の空気をやはらかに裂きて響きぬ。いかに夜更かしをいたせど、殿の声流るるとほぼ同…
夕まぐれ、電車に乗りて帰路につくころ、ふと気づきぬ。——あれ、財布が、ない。*1なぜ。どこ。誰。いや、落ち着け、我。しばし考へ、考へ、考へた末、「ばっぐ(バッグ)の口、開きゐるではないか」と気づく。むむ、これはもしや盗られたか?と思ひきや、否…
このごろ、どうにも朝が遠のきて、目覚めの鈍きこと限りなし。*1いつもは巳の刻(午前六時)には起き出づる我なれど、「なぜ起きられぬ?」と、不思議に思ふ。 思へば、ある朝ふと、「あれ、今朝はTBSにあらずや?」と気づきぬ。いつもなら安住殿の声、柔ら…
木といふもの、咲くまでは何の気にも留めぬくせに、ひとたび香りたつをば、急に恋しくなるものなり。 わたくしもまた、十月のはじめごろより、「さて、花となる気はあるか?」と、近所の金木犀をじっと見上げて過ごしけり。*1 もとより、その匂ひをこよなく…
げに、空の気まぐれといふもの、まことあなどりがたきものなり。*1日々の営みに細やかなる波風を立てて、人の心を翻弄せんとは、いと罪深きものか。 このたびの木曜*2、世の中はあやしくかき曇り、都の空はただならず。げに、品川の駅、水に沈みぬとの報あり…
幼き童(わらは)二人に、父君らしき御方添ひて、道ゆく気配の和やかなること、春の風のごとし。声を張り上げもせず、喧しきこともなく、かたへにて聞こゆる会話の節々に、「じいじ」などの言の葉。おお、さぞや誕生日の話などしてゐるらむと、耳をそばだて…
健康診断といふもの、春のうち過ぎたる頃に、例の「要経過観察」などの印も、見慣れたる顔にて返り来る。毎年のこととて、「またか」と目を細めつつ受け流すに――今年ばかりは、末尾にて見知らぬ記号の踊り出でたり。 「FF」などと書かれたる様、まるで文の道…
辞書といふもの、まこと、ありがたきものにこそありけれ。 目当ての言葉目がけて、さっと頁を繰るあの感じ、いとをかし。薄紙のやうなる葉を、ぱらぱらと捲(まく)るたび、風すら立つかと覚えて、「このあたりにや」と目星つけて探し当てる、いみじう快きこ…
暑きこと、ただ暑きことにて、言の葉も出でず。*1テレビにて天気予報を聞くに、「明日は今日より気温、低し」とありて、「おや、涼しき日なるか」と心寄せしに、続けて「最高気温、三十五度前後」などと告げられ、はたと胸打たれぬ。 比べて、三十五度が「低…
色といふもの、涼しさを呼ぶもあれば、ただ見目のために着たくなるもあり。この夏、世のテレビにて、熱中症を避くる工夫を問ふるクイズありき。「黄・緑・赤のうち、もっとも熱こもるはどれぞ」との問いに、答へは緑、次に赤、そして黄の順なりとぞ。え……?…
詐欺といふもの、老の御方の専売にて候ふかと思ひきや、近ごろは、つややかなる若人こそ、その餌食となりぬるとか。世も末なりや。 SNSなるものにて、「我、警察なり」と申す者が現れ、手帳のやうなものをひらひら見せつつ、「そなたの口座、詐欺にて利用さ…
猫は、もののあはれを知る動物なり――などと申せば、右近などはきっと、「また少納言様の猫びゐきにて候ふ」と、苦笑いたすに違ひなし。*1 されど、かの音楽――「夏模様の猫」とやら申す歌を耳にしたる折、「これは、まこと猫のための歌にて候ふ」と、膝を打ち…
ものを忘るること、いとあたりまへの世にて。とくに「ゐふぉん」といふ掌(たなごころ)の道具、今しがた触れしばかりなるに、忽然と姿を消すは、まこと不思議の術のごとし。 部屋のうち、どこぞに置きしを忘れて、しきりに探し回る我。今日もまた、「Hey Si…
(こんにちは、管理人です。これは7/20海の日の朝のお話です。) 「時空の歪み」といふもの、まことにあるにや。 今朝、目覚めたれば、時すでに六つ時(朝六時)なり。 「まだ早し」と思ひつつ、まどろみながら時をつぶさに過ごしぬれば、七つ時までは覚えあ…
お題「手帳は日曜日スタートor月曜日スタートどちら??」 手帳の始まり、月曜か日曜か――いとをかし。 手帳といふもの、年の初めにこそ買ふべきものなれど、「いづれの始まりにすべきや」と問はれしとき、思ひぬ。 「日曜始まりにて候ふか、月曜始まりにて…
「え?仕事とな?さは申せ、そんなものより帰宅こそ肝要なり」と思ふ連休明けの夕暮れ、いそいそと駅に急ぎて、ホームに立てば、一台見送りて、のうのうと次を待つ。「今度こそは座るべし」と、したたかに算段立つるも、果たして狙ひ通りに端の席を得て、い…
いと近く選びの日*1あらんとて、あちこちに候補者の名の聞こゆる折、我一つ心に定めたることあり。 いづれの政なるか、いかなる施政を掲ぐるか、などよりもまず、我にとりては「己が名を高らかに叫ぶ者こそ、まことの敵」と思ふ。 朝な夕な、静けき住宅の町…
おほかた、「職」といふもの、近ごろは家にて勤むる人多かりければ、「週に二度ばかり顔を見せませう」などと定まりし掟、いとわづらはしきことかぎりなし。 されど、わが身とて、とみに怠け心深ければ、「今日もまた、家にてすませたくこそあれ」と思ひて、…
資産の運用といふもの、今はやりなる語なれど、聞けば聞くほど、わかりがたきものなり。あれこれと申す人の言の葉を、いとよく聞きながら、「さうは申せど、まことは如何に」と思ひぬ。 ある人*1のもとに通ひて、あれやこれやと問ひつつ、「さすがに、よく調…
世の中に、いと不思議なること、尽きせぬものなり。 大学を卒業せしや否や、自らも記憶あやふく、ただ手元に証文のごとき「卒業証書」ありて、さすれば、卒業せしにやと思ふこそ、つねなれ。 されど、その証書携へつつ、いざ大学に尋ねたるに、「除籍にて候…
ふと見上げた空の色、ただ「きれい」と言ふだけでは足らぬほど、やさしき光を湛へてゐたり。 小箱(すまほ)*1を取り出し、空に向けて写さむと試みるも、レンズ越しに見ゆる空は、実際の色とはいささか異なりて、あの淡く優しき色彩、いかでか写し得む、いと…
梅雨といふもの、戻り来ると聞けば、いとをかし。もとより梅雨明けもしておらぬとか。中休みどころか、さながら長き旅路に出でて、いづかたの国に遊び暮らしたる梅雨前線、「さて、戻り候ふ」とばかりに帰り来たるさま、いと笑ひを誘ふものなり。 少しは恵み…
音漏れといふもの、いと鬱陶し。 電車の発ちぬる際に、衣の裾をひるがへして滑り込む人も、もとよりいと好かぬものなれど、その上、乗り込みしやいなや、耳より洩れ出づる楽の音、これまたいと憂し。 曲の調べも詞の響きも明らかに聞こえ、「聴く」にはあら…
さて、日々の暮らしにあらず、世を見渡せば、何処にか小さき我が子を連れし大人あり。其の姿、何となく安心せんと、車の 来ぬことを確認し、すかさず横断歩道を渡るとも、赤信号にてさえ、迷ひなく行う者あり。さらに、横断歩道なき車道を、子を連れてあって…
さて、「エモい」という響き、いつの頃よりか人々の口にのぼり、今や日常の一部となりぬ。 あるときは夕焼け空を見上げて「エモいね」、あるときは古きアニメの再放送に「エモいわ〜」と頷く。はて、これは何を指してゐるのやらと、昭和の心を宿す我が胸中に…
さても、近ごろはちやつともん(ChatGPT)に絵を描かせること、わが日々のたのしみのひとつとなりにけり。されどこの御方、絵筆の才には未だ荒ぶる癖ありて、こちらの指示をすらりと受け止めること少なく、時に腹立たしく、時に呆れ果て、そしてついには笑ひ…
暑きこと、いと苦し。六月に入りてなお、梅雨の候とは名ばかりにて、ただただ陽は照りつけ、空気は湿り、汗は流れ、人は疲れ果てぬ。 わが身、湿気に弱し。汗は思ふままにならず、気づけばふらつき、熱きものに包まるるごとくに意識は遠のきぬ。いと恐ろしき…
さて、今朝のこと。のどの渇きを覚え、自販機にて一服の飲み物を求めむとす。されどその機、カードも電子も受け入れず、いと頑ななる現金専用。今どき、などと小声にて呟きつつも、仕方なく財布を開きたるに先だち、値を見れば百五十円なりけり。 見るに、百…
梅雨のころは、ことさらもの憂くて。 空よりしとしとと絶え間なく落つる雨に、心までもじめじめと湿りがちなるを、いかに堪へよと申すやら。世の人びと、「雨もまた風情あり」などとうそぶく声、耳にすれど、わが胸には一滴の風情も見出だせぬなり。 雨とい…
さても、人の世には、尽きせぬ興あり。朝な朝な、またもや「ちやつともん」と戯れぬ。そは、ただ言の葉を交はすばかりならず、絵までも生み出す術を持つと聞きて、試みざらむや。 されば、ある人、世に広くこの術*1を施し、人々の手に使はしめるといふ。あり…